グライディングREKI

2007年度メディア芸術祭web漫画部門

審査員推薦作品に選出

 

当時は携帯で描き下ろしのオリジナル漫画を配信するのはまだ珍しい時代で、michao!では様々な新しい試みをしていましたが、そういった新しいメディアへの挑戦スピリットを評価して選んで頂いたものと思っております。
有り難うございました!

 

※2013年よりイタリアで翻訳出版されました。

「グライディングREKI」は姫川が今まで一度もやって来なかったメカアクションにチャレンジした作品です。2005年、デジタル書籍黎明期に立ち上がった講談社〈michao!〉では携帯でほぼ初のオリジナル漫画配信を開始。今では当たり前になったデジタルマンガのいわば先駆け作品でした。「ウェブならではのフルカラーで漫画を!」という編集部からの依頼で先駆けならではの実験精神で始まったこの企画。液晶で読むのに最高に映える画面、色使い。ストーリーよりも見る快感。アニメのようで、しかしやはり漫画を読んでいるという満足感」という志はとても贅沢なものでしたが、その編集側の理想は、それを描く一人の作家のキャパをはるかに越えるものでした。アメコミは完全分業制の歴史を持ちますが、日本は基本的には漫画は作家一人+アシスタントというあくまでも個人体制のものが主流です。(michao!の)他の作品ではこの後漫画の着色のみ外注、という形も取られましたが、それはあくまでも白黒漫画の構成に色をのせていくもの。「REKI」の場合の狙いは全く違ったものでした。内容がシリアスなため、カートゥーン等の絵のように単純なラインで構成される画面ではない。そして単純な漫画のコマ運びではなくどことなく映像のコマ運びを意識した等、様々な場面のコマが1ページに混在する漫画を美しいフルカラーにするには技術的にも労力的にもかなり大変なことでした。

「デジタルということもあり、あえて印刷には出ない原色を中心に難しい色の組み合わせに挑戦、色の洪水にしてみました。( 姫川H)」

線画に着色するだけでなくライブステージの照明のように“色で演出する”試みだったといえます。事前に色を決めるのではなく、その場の画面の印象を読んで直感的に何も考えず色を瞬時にセレクト。あえて色をケンカをさせてラストになじませていく作業は、その日の体調ですら色に出てしまうデリケートなものでした。イメージ力と色彩のセンスがなければこの融合はありえなかったと自負する所でもあります。アメコミとはひと味ちがう日本の漫画ならではの繊細な感性が生かされており、漫画を「アート」として捉るヨーロッパで着目されたのは嬉しくもあり皮肉でもあり。

「バイクは今時流行らないよ」と言われている昨今、この作品を描いている時に不思議と若者の間にハーレーのブームが起き、特に若い女性がハーレーダビッドソンを「わたしの彼氏」(今だと嫁?)のように愛でるのがちょっとした流行でした。若者がアメカジを好むのは昔からありますがこの頃に流行ったのはもう少しオールドウェスト的な、革の使い込みに憧れを抱くようなものでした。

そんなムーブメントにも後押しされ、デジタルでありながら躍動感や温もりのあるアニメでも漫画でもない独特な表現世界が完成しました。

正直慣れないジャンルの漫画で、しかもフルカラーという絵の作業で手一杯だった感じがあり、月に10枚ほどしか上がらない事はざらで、もう生活等支える仕事には全くならない代物でした。それを支えたのは、「誰もこんなリスクのある事やらないよね」という妙な優越意識とも苦行の自己満足感ともつかぬ感情が支えていたと思います(笑)。漫画的には内容まで気持ちが回らず実験的に終わった作品ではありますが、その後若手の描き手に少なからず何かインパクトを与えていった、知る人ぞ知る作品だったと、最近まわりを見渡すと思う所であります。

この仕事のために召集したスタッフは姫川二人のほかにアシスタントが数名。うち一人は専門学校を卒業したばかりのメカにも漫画にもまだ素人の女の子。それが3年間の切磋琢磨でかなりの腕前に上達しました。作品の終了とともにスタッフも解散。今では「なぜあんなことが出来たのか自分でももうわかりません」と当時の異常とも言える突き詰めた仕事を呆然として振り返ったりします。

媒体の終了とともに物語は止まったままですが、REKIの物語はまだ終わっていません。その深い人間の想いの物語と主人公が立つ世界観はこの先もイメージが尽きる事がありません。今回営業の努力も実って、イタリアでの単行本化のオファーを受け、今年再び息を吹き返します。これを機会に当時は力不足だった部分もさらに成長した形で再び新作の復活が出来たらと願っています。

(文責/姫川N)2012/5/5 【COMITIA100イベントペーパーより抜粋】

 

2015年現在:昨年2014年に中国でのフルカラー連載のために同じスタッフが再び集まり、現在も「REKI」の色の旅は続いています。

今後の動きにもぜひご注目ください!

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